小さな習慣、大きな可能性
「失われた30年」・・・経済成長のない30年間を指すこの言葉ですが、では39歳になる私は、ちゃんと成長してきただろうか。社会人になってから約20年、結婚し、子供にも恵まれ、なんとなく日々を過ごす中で、「忙しい」を言い訳に楽しいこと、楽なことばかりを選んで、成長することから目を逸らしてきたのではないだろうか。そう、私にとっては、まさに「失われた20年」だったかもしれません。
私は昨年、行政書士の資格を取得しました。決して大きな出来事ではないかもしれません。私には当時小学生と、生まれたばかりの子がいました。家事育児と仕事の合間を縫って勉強し、何度も挫折しそうになりながら、机に向かい続けた日々。そんな小さな「継続」が、気がつけば人生を変えるきっかけになりました。今、行政書士として歩み始めた1年を振り返りながら、改めて感じることがあります。社会が悪い、時代が悪いと嘆くより、自分自身が成長し未来を掴みに行く方が、よほど早く確実に人生は変わるのだと。
挫折との戦い、そして小さな変化
行政書士を目指したきっかけは、正直に言えば現状への漠然とした不安でした。このままで良いのだろうか、子供たちのやりたいことを応援してあげられるのだろうか。会社員として定年を迎えた後はどう過ごすのか。もっと自分にできることがあるのではないか。そんな思いが募る中、行政書士という法律の専門家として人の役に立てる仕事があることを知りました。
しかし、始めてみると想像以上の困難が待っていました。まず、学生の頃もそうですが、勉強の習慣がないのです(笑)。朝4時に起きて勉強し、仕事が終わってからも机に向かう。子どもが寝静まった夜中、0歳児を抱っこ紐で抱っこしながら法律の条文と格闘する日々。家族との時間も削り、趣味のウインドサーフィンも控える生活が続きました。特に辛かったのは、なかなか成果が見えない時期です。「本当に合格できるのか」「こんなに頑張る意味があるのか」と自問自答を繰り返しました。
それでも続けられたのは、家族の応援と小さな変化を感じ始めたからです。法律の知識が身につくにつれ、日常の出来事を違った角度から見ることができるようになりました。ニュースの背景が理解できるようになり、社会の仕組みへの理解が深まる。この小さな成長の実感が、私を支えてくれました。
継続が開いた新しい世界
合格から1年が経った今、あの時の行動が確実に人生を変えたと実感しています。行政書士として開業し、相続手続きや住宅宿泊事業の届出等のお手伝いをさせていただく中で、多くの方の人生の転機に立ち会わせていただいています。そして何より、先輩方からいただく温かいご指導や助言が、新人の私にとってかけがえのない財産となっています。実務を通じて、行政書士という職業の奥深さと責任の重さを日々学ばせていただいています。
先日、お父様を亡くされたご家族の相続手続きでお世話になった時のことです。「父は生前、家族のことばかり心配していました。でも先生のおかげで、きちんと整理ができて、父も安心していると思います」そう涙ながらに話されるお母様の言葉に、この仕事の意味を深く感じました。また、民泊を始めたいという若い起業家の方が「地域を元気にしたい」と熱く語る姿に触れ、自分も新しいことに挑戦し続けていこうという気持ちが強くなりました。
この「継続する力」は他の分野でも活かされ、趣味のスポーツや健康管理においても着実に成果を積み重ねる方法が身についています。継続は、一つの分野で身につけると、人生のあらゆる場面で武器になることを実感しています。
行政書士として、そして一人の人間として
新人行政書士として日々感じるのは、諸先輩方の経験に学びながら、自分自身も学び成長し続けることの重要性です。法律や業務だけではありません。父親としても非常に重要な要素です。子育ては、まさに継続の連続です。毎日の声かけ、一緒に過ごす時間、子どもの話に耳を傾けること。どれも小さなことですが、その積み重ねが子どもの成長につながっていき、ひいては自分自身の成長にもつながります。
資格取得に向けて努力する私の姿を見て、子どもが「お父さんみたいに頑張る」と言ってくれた時、努力する、継続することの本当の価値を感じました。それは単に自分のためだけではなく、周りの人にも良い影響を与えるものなのだと。自分が変わることで、家族も変わり、そしてそれが少しずつ社会にも広がっていくのかもしれません。
今日から始められる小さな一歩
「失われた30年」という言葉に惑わされることなく、私たちには今からでも人生を変える力があります。あの分厚いテキストや肢別本を初めて手に取った時、何が書いてあるのかさっぱり分からなかった。でも、時が経つにつれ理解できるようになる。それは継続という、誰もが持っている武器を使うことです。
行政書士を志したとき、そして行政書士として歩み始めたこの1年間で、私は確信しました。時代の不運を嘆いている時間があるなら、小さくても良いから、まず何かを始める。そしてそれを継続して必ず達成する。社会が豊かになるのを待つのではなく、自分自身が成長し未来を掴みに行く。その姿勢こそが、個人の人生を変え、ひいては社会を変える原動力になるのだと思います。
皆さまにとっての「小さな一歩」は何でしょうか。新しい資格への挑戦、健康のための運動習慣、家族との時間を大切にすること。どんなに小さくても構いません。大切なのは、今日から始めることです。きっとそれが、思いもよらない未来への扉を開いてくれるはずです。
中尾幸樹