みんなの眼(まなこ) ~ある認知症カフェのお話~

みんなの眼(まなこ) ~ある認知症カフェのお話~

副支部長の荒井真澄です。女性支部役員が多い中で数少ない男性です。

 

毎月第四火曜日の午後に、「東逗子オレンジカフェ『あつま~る』」という認知症カフェのお手伝いをしています。会場は逗子市内の県営桜山ハイツ集会所が基本ですが、季節によっては、屋外の東逗子駅前ふれあい広場のこともあります。毎回20~30名の方に参加いただいています。

 

そこでの私の役割は、歌のピアノ伴奏です。ギター2本も加わって、毎回童謡や昭和歌謡の名曲を10曲近く歌っていただいています。

 

この歌のプログラムの魅力は、リーダー長谷川静さんの選曲の視点とトークです。単に参加者の方々が好きな歌を勝手に歌うというスタイルではなく、その季節、月、行事にちなんだ歌や逗子になじみのある曲、作詞作曲家などをあらかじめ選び、本番の会場では、絶妙な語りで歌をつなぎ、プログラムを進行していきます。長谷川さんが提供する話題をきっかけに昔話を始める方や、歌の題名を告げた途端にピアノ伴奏開始前から口ずさんでしまう方など様々な反応があって、とても和やかな雰囲気になります。60年近くピアノを弾き続けていますが、みなさんが声をそろえて楽しく歌っていただけることに、音楽で心つながるささやかな喜びを感じています。

 

ギター譜面をもとにピアノでメロディーと伴奏を付けるので、練習準備段階で、ある程度アレンジをして、歌いやすいようにキーを調整する必要もあり、この部分に多少エネルギーがかかります。時に、ラストを恰好よく盛り上げて曲を締めくくったつもりだったところが、繰り返しやもう1コーラスが残っていて、あわてて追っかけて伴奏を続けるなど思わぬハプニングもあったりしますが、心広く許していただいているという感じでしょうか。

 

カフェの運営には、リーダーの長谷川静さんを中心に、喫茶、会場設営のボランティアの皆さん、逗子市役所の保健師さん、逗子市社会福祉協議会、東部地域包括支援センター等の専門スタッフの方が支援してくださり、個別相談も受けつけています。健康管理講話、口腔体操、認知症予防体操(コグニサイズ)、ラジオ体操などの定例プログラムに加え、紙芝居、フラダンス、合唱、和太鼓など出演者による企画は盛りだくさんで、運営スタッフが毎回知恵を絞っています。

 

大切だと思うことは、このような数多くの方が少しずつながらも毎月継続的に参加者の皆さんと関わっているということです。いろいろな方の複数の「みんなの眼(まなこ)」によって、「最近あの方お見えにならないね」など参加者やスタッフの中でお互いをごく自然に気遣い、余計なお世話にならない適度な距離感でその心配を解いていける心地よい人間関係につながっているように思うのです。

 

行政書士として終活のご相談をお受けすることが多いのですが、必要となる法的な支援の話ばかりではなく、周囲との関わりを持つことの大切さについても話が及ぶことがあります。「あつま~る」のネットワークを通じて、私も「みんなの眼(まなこ)」の一人であり続けたいと思っています。

(荒井 真澄)